ヌメ革のベルト

何の変哲もない革のベルト。

ベルトというとほとんど必需品のようなものだから、いろんなベルトをしてきました。布のベルト、革で編まれたベルト、革の割りとシンプルなベルト。そんな経験から考えて欲しいと思ったのは、しっかりかっちりと締め付けてくれる厚みのあるベルト。そして、長持ちするベルト。

欲しいものから考えていった結果、しっかり分厚く、革らしい強さがあればそれがいい。最初試作したものには付けていたCARAPACEの刻印さえ、邪魔な気がして取ってしまうと、「何の変哲もないベルト」というのがぴったりのベルトができて、「そうそうこういうのが欲しかった」とニヤニヤしてしまうのでした。

長く使いたくなる変化をする革。

このヌメ革。CARAPACEのすべての商品に使われている同じ革です。

心地よく経年変化します。初めはピンクっぽい白、そこから艶のある飴色まで変化していきます。染色はなく、表面加工もほぼしていません。染色や表面加工のいいところは、色が付けられたり、風合いをもたせたり、ある程度汚れを防いだりします。だから、それらをしてないこの革は、一面から見るとは影響を受けやすく、シミやキズがつきやすい革です。でも、この革を見ていてシミやキズが嫌な感じに見えたことがありません。革に起こったいろんなこと、全部吸い込んでいってくれ、それが心地いいです。

これから起こることも吸い込んでいってくれますが、これまで起こったこともあまり隠されず革に残っています。牛が生きていたときについたキズ、鞣（なめ）しの工程でできた薬品の染みこみ具合のムラなど。逆に言えばこれだけ表面のことがよく分かる革なので、もともとの皮の状態としてキズなどが少ないものしか使えません。）

以前のことを隠してないから、これからのことも心地よく記録していけるのかもしれません。

使っているのは背中の革。

革は体のどの部分かによって性質が異なります。大ざっぱに言うと、背中の方は繊維が詰まっていて、腹側は緩んでいます。人間で想像してみてもわかると思いますが、お腹は痩せたり太ったり、少し食べたりするだけで、形が大きく変わるので、表面である皮のほうも自然と緩んできます。腹側の革は、伸びやすく型崩れも大きく、また革の裏側や断面から繊維が解けてきやすいです（毛羽立ちが大きい）。

背革の革は、硬く締まっていて引っ張っての伸びにくく毛羽立ちもあまりありません。

ベルトは腰に巻くとき、使用中も結構力がかかるので、背中の繊維の詰まった部分だけを使用するために、背骨と平行に取っています。

腹側の革は、力があまりかからない部分など他の商品に使っています。